2024年5月14日 焼き鳥と他者の意見

バイト終わり、家に帰ると全身ピンク色のチェック柄の寝巻きを着た彼女が陽気なステップで出迎えに来て、「私が奢るからからさ、鳥貴族に行かない?」と提案してきた。
「いいね、じゃあまず着替えようか」
と言うと寝室へ行き鼻歌を唄いながら外行きの服へと着替え始めた。

どうやら彼女のお母さんが、彼女の誕生日祝いということでお金を送ってくれたらしい。彼女が親からの金銭的な支援を受けた時に決まって口にするフレーズがある。
「一人っ子最強です!」
これは私には兄弟が多くて親からの支援など皆無に近いことを揶揄するようにも言っていて、私はその度に、大袈裟に悔しがってみせる。

鳥貴族に行くのはいつぶりだろう。多い時は、2週間に一度行っていた気がするけれど、最近はめっきり行かなくなってしまった。家でお酒を飲む習慣が定着したからだろう。

火曜日の夜にも関わらず、店内は若い男女で喧騒としていた。席に着くと彼女がふと漏らす。
「まるでお客さん達ってNPCみたいだよね」
「確かに居酒屋っていうシチュエーションの為に用意されているみたいだね。でも、彼ら彼女らにも僕らが全く知らない20年以上の歴史があるってすごい不思議だよね」
「もしかしたら、私達がNPCなのかもね」

焼き鳥やらドリンクを注文し終えて彼女の顔を見ると、どこか浮かばない表情をしていたので、何かあったのかと訊ねると、小さく頷いた。
彼女の母親が、お姉さんと電話をしている時、叔母さんは、「ずっと勉強させてお金ばかりが掛かって一体何の意味があるの?」と言ってきたらしい。
彼女のお母さんは、「私の子は自己主張も下手だし、協調性も無い。だから彼女にとっては勉強して他人よりも有能であることを示すことが最も適切な生き方だと思うの」と説明してくれたらしい。
彼女の母親が、きちんと説明してくれたことは私もとても嬉しかった。彼女も勿論そうだったのだけれど、一度モヤモヤした気持ちがそう簡単に晴れないのだと言う。
誰がどんな生き方をしていようと、あなたに迷惑をかけていないのに、どうしてあれこれ言いたがるのだろう。私は人生で大事にしている考えがある。

「あなたが他者に対して礼儀正しく誠実である限り、あなたのことを批判してくる者がいるのなら、彼らはクソ野郎である」

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